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やったろうじゃん的バスケット事情 〜NY編〜
としゆき・こいずみ
毎月25日更新
2007/01/25 UPDATED
第36話 『潜入!カレッジ・バスケットボール』

今回は、カレッジ(大学)・バスケットボールのレポートです。

私の友達で、 ブルックリン大学 のバスケットボール女子チームの総監督がいる。 ALEX LANG (アレックス・ラング) という、まだ若いが実績のある監督だ。彼は、父親の影響で高校生のころから監督をしていて、大学卒業後、2年間大学のアシスタントコーチを経て、ブルックリン大学の総監督になった。今年で5年目のベテランである。今回はその試合を見に行った。

会場は普通の体育館。よく映画とかに出てくる、普通の学校の体育館である。アリーナやNBA で使うようなでかい会場ではなく、ごく普通の体育館である。

しかし、このごく普通の体育館の中で、「すごい」とうなずくことができたり、「学生とは思えないほど徹底した組織」に驚いたのであった。

■中央のスーツを着ているのがアレックス総監督(若いでしょ)■

NCAA の大会 ということで、全部が本格的なのだ。

  • 警察がいる。「COLLEGE POLICE」という人が常駐していた。我々が、写真を撮っていると、「許可はうけたのか?」「誰の知り合いだ?」とか、質問された。「アレックスの許可で撮っている」といったら、即OK だったが、結構、厳しい。
  • 試合会場につくと、ボンボンを渡された。チームを盛り上げろということだ。もちろん、チケットは無料である。しかし、このボンボンのほかにも、パンフレットや、選手のデータなどが渡された。
  • ラジオ放送もしている。私は、彼らの真下に座っていて、時折声が聞こえてくるのだが、結構熱く語っている。試合後に少し話を聞くと、車の中で聞いていたり、インターネットで、聞いているファンがいるということだった。地元びいきの熱狂的なファンもいるらしい。
  • 新聞記者もいた。試合中もしっかりメモを取っていて、最後には選手や監督にインタビューをしていた。
  • 試合の前に、国歌を流す。まるで、NBA の試合のようである。みんな、立ち上がり、国旗に向き、敬意をはらいながら国歌を聴いている。
  • 選手の紹介。メンバーの紹介をマイクを使って放送。試合前の緊張を盛り上げてくれる。そして彼は、試合中もアナウンスをしていた。誰が何回目のファールをしたとかである。
  • 各チームには救護班もいた。試合中に怪我をした選手がいて、その治療に当たっていた。
  • もちろん、お決まりの選手が使うタオルや、「ゲーターレード」(スポーツドリンク)も、用意されている。
  • そして、タイムアウトやハーフタイムに活躍する、チアリーダーもいた。ちょっと素人ぽい場面もあったが、そこは愛嬌。
  • オフィシャル席にも6人座っていて、スタッツ、タイマー、35秒等の仕事をこなしていた。
  • 審判ももちろん3人いて、全員がプロフェッショナル・レベル。みていて明らかに違うことがわかる。フリースローやタイムアウトの時の審判のポジショニングって知ってます?あれって、ただ単にたっているのではなく、それぞれの役割があってその場所に立っているんですよ。私も審判の勉強をした(正しくは、させられた)ので、そのポジショニングを知っているのですが、それを忠実に行っている。

それに、ハーフコートの時の各審判の位置も、徹底していた。トップにいる審判が、ゴール下のファールをとるようなお粗末な笛は一回もなかった。各審判が自分の役割をこなしているので、自分のエリア以外の笛をふかなくてもいいのだ。

審判というのは、共同作業なのです。 これを知っている人は意外と少ないのですが、試合の場面によって、ボールの行方を追っていく人と、それ以外のことを見なければいけない人がいる。ボールがコートのどこの位置にあるかによって、各審判のポジションと、担当エリアが決まっているのである。だから、3人の審判全員がコート全体をみなくても、自分以外のエリアは、他の審判に任せればいいのである。これが徹底して行われていた。

■こんな立派なパンフレットが用意されている■
■応援にはかかせない「ボンボン」も■

 

  • そして、なんとハーフタイム・ショーならぬ、 エンターテイメント も用意されていた。

会場に入ると、チケットの半券を渡された。半券には「通し番号」が書かれている。ハーフタイム中にくじ引きがあって、運良く自分の番号が呼ばれると、ちょっとしたゲームに参加できるのだ。今回のゲームは、30秒内に、シュートを決めるというゲーム。但し、最初はゴール下から始めて、シュートを決めたら、フリースローライン、そして、3Pライン、最後はハーフコートラインのシュートを決めるというゲーム。

今回は、4人の挑戦者がいたが、誰も成功しなかった。しかし、参加賞をもらっていた。

もう飽きることがないのである。

さらにすごいことが、 この全部の裏方達が、学生なのである 。免許が必要である審判や警察以外は全部、学生が自ら行っているのである。チケットの管理、アナウンス、ラジオのDJ、記者、ドリンクの準備等々。

試合全体が組織的であり、各学生がプロフェッショナル的な気持ちで取り組んでいるのである。これは、自分の将来の仕事を想定してのことなのであるが、みんな責任を持って各仕事をこなしているのである。彼らにとっていい動機付けであることは間違いない。

■白いユニフォームがブルックリン大学■

さて、試合に戻ろう。選手たちである。

彼女たちは、1日2時間、週6日練習している。意外と練習しているのである。練習内容は、時期によって異なるが、ほぼ毎日腕を磨いているわけだ。なるほど、チームPLAYができている。

彼女たちは平均身長、約180CM と、他のチームの平均より断然低い。なにせ、メンバー表をみると、 驚くことにセンターという肩書きの選手は一人しかいない 。みんなG(ガード)か、F(フォワード)である。なので、ゴール下のフォーメーションよりも、ミドルレンジのフォーメーションが多かった。

小さいチームに課題なのが、リバウンドと、オフェンスの戦術 。総監督アレックスはどういった作戦をひいているのか試合前から興味深かった。

さて、試合が始まった。

リバウンドに関しては、「ひたすらボックス・アウト」する。 速攻を捨てて 、リバウンドに集中するということ。 フォワード・ガードも関係なく、リバウンドに飛び込むこと 。これは、我々のチームにも言えることだ。速攻のことを考えて、先に走るという作戦よりは、相手のセカンドチャンスをつぶすために、リバウンドを確実に取らなければならない。試合後に話を聞いてみると、やはりアレックスもリバウンドにはてこずっているようである。練習でもリバウンドの練習は欠かさずやっているとのこと。

オフェンスは、ムービングをうまく使って、シュートチャンスを狙っている。

印象的だったのが、ハイポストに最初に立っている選手の次の動きが、 「ポップアウト」 といって、外(トップ・オブ・ザ・キーのポジション)に出てくることだ。通常ならば、ハイポストの次は、ローポストと考えるが、アレックスの作戦は、外に出て攻撃するというものだ。

かといって、中を使わないというわけでもない。ローポストには必ず、一人立たせている。彼女はボールサイド側のローポストに常に陣取っている。ボールが逆サイドにいくと、そのまま逆のローポストに移動するのだ。

そのような動きでパスをまわしていくと、コーナーと、ハイポストがあく。ハイポストへ外にいる選手がフラッシュ(飛び込む)をしてそのままジャンプシュート。絶対にもらってからドリブルをついたりして、ペイントを狭めたりしない。そのままジャンプシュートである。シュートが打てなければ、コーナーへパス・アウトして、そこからの3Pシュート。

全体的に思ったのが、 オフェンスのシュートタイミングがほとんど全部といっていいほど、完璧である 。「あぁ、そんなところでシュートするのかよ」、とか「なんで、そこでつめるの?」といった感想が一言もでなかった。各自が、個人の動きを把握しているというよりは、 各自がチーム全体の動きを把握している のである。だから、選手も、シュートを打ちやすいし、自然とリバウンドにも飛び込めるのである。

そして、ディフェンス。

驚いたのが、両チームとも、試合直後から、オールコートである。相手は、オールコートマンツーであったが、ブルックリン・カレッジは、 1−1−2−1−という変則型

1−1−2−1という型は、実際に見るのは初めて。これが、結構効果大。しかも、女子の動きにあっている。「男子だったら、一人で守れるところが、女子の場合は2人じゃなきゃ守れない」という、身体能力の差というものがバスケットのなかにあるが、それを、完全にカバーしているディフェンス・スタイルである。しかも、どんなオフェンスにも対応できていた。アレックスにトラップポイントをきいたが、なるほどである。でも、「この作戦のこととかはあまり書かないでね」といわれたので、詳しい動きは書けないが、よく機能していたことは事実。驚くことに、この「1−1−2−1」スタイル、2週間前に取り入れたばかりとのこと。これから、どのようにレベルアップするのかが楽しみである

この日は、69−65と、接戦の末、勝利をものにした。アレックスもサービス精神旺盛で、いろんなフォーメーション(オフェンス&ディフェンス)を見せてくれた。ありがたいありがたい。

■ベースラインからのフォーメーション。ポストに2人ずつ立っている■

私は NBAよりも、カレッジバスケのほうが好き である。なぜかというと、 NBAはSHOW的な感じがつよい 。各自のスタッツを気にしたり、いかに派手にPLAYするということが前面に出ているようにみえる。

しかし、カレッジ・バスケにはそれを感じない。もちろん、上に上り詰める選手の中にはそういうのが見えるが、 「チーム勝利&選手育成」というものが最上位ある のがわかる。個人の成績重視というよりは、チームの成績に重きを置いている。そして、選手育成というのも見られる。よく著名な監督の本に「バスケを通して、技術を教えると同時に、人間として成長させることが重要である」と書いてあるが、なるほどである。バスケットボールという競技のなかで、技術だけではないことも学んでいくという姿勢である。

NBAは、実力120%の選手が5人集まっているが、カレッジはメンバーの中には80%の選手がいたり、40%の選手がいたりする。それでも、5人集まると、自分の力以上のことができる。 1人では無理なことが、チームだったらできてしまう 。そのために、自分ができることは、一生懸命やるということである。

コートに出ている選手だけが、試合をしているのではなく、チーム全員で戦っているということである。

バスケの試合なのであるが、裏方に徹している人もいれば、選手としてコートに出ている人もいる。全員がひとつとなって試合をしているということが、ひしひしと感じてきた試合であった。

カレッジ・バスケの魅力を満喫した試合だった。

としゆき・こいずみプロフィール
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