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From: Maki Sano
Sent: 2007/9/11
To: Everyone  
Subject: 6 年前、グラウンドゼロにて

こんにちは!Maki from New Yorkです。

おかげさまで、先月横浜で行なわれた世界エスペラント大会は、
57カ国から2000人近くの参加者を迎えて無事終了しました!

35人の外国人を引き連れての広島行きも、とても意義深いものでした。
平和記念公園と原爆記念館を見学した後、彼らにちょっとしたアンケートに
答えてもらったりもしたので、そのうちここで紹介させていただきますね。
(悪筆の人が多くて、解読&翻訳に時間がかかるんですよ〜 _ _;)

さて、今日は9月11日。
そう、あれから6年が経つのですね。

あの日を発端に始まった暴力の応酬は、
あれから6年を経た今もまだまだ続いています。

人々の確かな記憶が薄れる一方で、
悲しみや憎しみはそのまま置き去りになり、
あの日を題材にした映画が何本も作られるなか、
9.11はどんどん、それぞれの人にとって都合のいいフィクションへと
形を変えていってしまっている気がします。

私は、あの日を題材にした映画をほとんど見ていません。
あの日起こったすべてが、あまりにも嘘臭い(不謹慎を承知で言えば)
まるで安物のアクション映画のような出来事だっただけに、
映画など見たらどっちが現実だか分からなくなってしまいそう、
いや、下手をすると映画の方が本当にあったことだと
勘違いしてしまうのではないか、と恐れているためです。

まさか、そんなことないよ、と言われるかも知れませんが、
人間の脳って、そんな程度のものじゃないかと感じています。

一昨年スキー場でスノーボーダーに追突されて気を失った後、
私は一時的に事故前後の記憶を失っていましたが、
その時つくづく思いました。そっかー、人間の記憶って、
ちょっと衝撃を受けたくらいでポンと飛んで行くものなのねー、と。

救急病院へと向かう救急車に付き添ってくれたドクターに
「先生、人間の脳ってこんなにもアンリライアブル(頼りにならない)
なものなんですねえ」と言うと、こう答えられました。
「ええそう、でもこうすることであなたを守っているのよ」。

そう、自分を守るためには、記憶だって消してしまう。
時には別の記憶と入れ替えてしまう。人間って実に都合がいい。

…ということで、自分の見たこと、感じたことを再確認する意味で、
6年前の9月、私にとって大切な一日となったある日のメールを
引っぱり出してみました。

確か「あの日」から一週間ほど経った頃、
まだ「グラウンドゼロ」という呼び名も定着していなかった頃、
戦争はまだ始まっていなかったけど、アメリカ中が報復に向かって
すごい勢いでまとまっていった頃に書いたものです。

(注:改めて読むとちょっと意味不明な箇所もあったので、
少しだけ言葉を足したりしています)


************************************************


実は先週末あたりから
かなり気持ちがダウンしてました。

TVや新聞は「追悼」「団結」「報復」「戦略」ばかり報道してるし、
全米でアラブ系移民に対するいじめが頻発しても
「ニューヨーカーだけはそんなバカな事をすまい」と信じてたのに
川向こうでアラブ系住民への人種差別問題が起きちゃったし、
「平和憲法の日本だけは戦争に加担すまい」と信じてたのに
我らが首相が憲法改訂をも辞さない姿勢を見せたりと、
信頼していた相手に立て続けに裏切られたような
気分を味わっていたもので‥‥
(いけませんね。性善説の人だったはずなのに。)

ブッシュの報復路線に完全に同調してしまっているメディア、
超マイノリティ(反戦派)になってしまったことへの孤独感・孤立感、
先述の「信頼していた相手に裏切られた感」、
そして何もできない自分への失望感・無力感などから、
ここ数日、自分の足下が揺らいでいるのを感じていました。

「もう誰も死んではいけない。テロリストでさえ。」
なんて考えてる自分の方が、ひょっとしたらおかしいのかも…?
とさえ感じました。そのくらい周囲は「一致団結」ムードだったのです。

今信じるべきものは何か。自分は何をするべきなのか。
自分の目でテロ事件の現場を見れば何かが分かるかもしれないと思い、
火曜日、山積みの仕事を放ったらかしにして行って来ました。

ちょっと怖かったのでY(家人)に「一緒に行って」と頼んでみましたが、
事件当日貿易センタービルから人々が飛び降りる様を目の当たりにし
自らも煙に追われて逃げ走った彼は今も少々のトラウマを抱えているらしく
「悪いけどオレは行けない」と。あっさり断られてしまいました。

そりゃそうだよね。仕方ない。一人で南へ向かって歩き始めました。

ロアーイーストサイドを抜け、チャイナタウンに入った辺りから、
立ち入り禁止の黄色いポリスラインがあちこちに張られ、
通行止めのストリートが多くなってきました。

Yと私が結婚の宣誓をしたシティホールの辺りまで下ってくると、
あたりは一面灰に覆われ、金属とプラスチックと骨が焼けたような
異臭が漂い始めていました。
私も、Yが買ってくれた防塵マスクを付けて歩きました。

ポリスマンが、私を含む十数人の「やじうま」連中ご一行を
倒壊現場近くまで誘導してくれました。

ナッソー・ストリートとリバティ・ストリートの角。
ここが一般市民が最も近くで倒壊現場を見られる場所でした。
現場から2ブロックのところです。

骸骨のようになってしまったサウスタワー(南棟)が、少し先で
斜めにかしいで立っているのが見えるだけでしたが、
やはりテレビで見るのと自分の目で見るのとでは全然違います。

家族や親しい友人がいきなりなきがらになって横たわっているような、
にわかには信じがたい、まったくリアリティのない光景でした。
「悲しい」よりも「何これ?」「なんで?」という感じです。

目の前にあるシーンを自分に受け入れさせるには
ちょっと時間がかかると思ったので、すぐそばの歩道脇に座って
一時間ほどぼーっとしていました。

考えることなどできず、ただ感じることしかできませんでしたが、
次第にはっきりしてきたのは「私は間違ってない」という感覚でした。

すぐそこで、今も瓦礫の下に埋まっている人たち、
彼らが最後に想いをはせたのは、
テロリストのことでも、もちろん祖国アメリカのことでもなく、
おそらく愛する妻、夫、子供、親、兄弟、彼氏、彼女のことだったでしょう。

いまだ白い煙が立ちのぼる瓦礫の山は、
とても悲しい光景ではありましたが、不思議なことに、
そこに「怒り」の空気はまったく感じられませんでした。
むしろ彼らの最後の想い、幾千もの"I love you"が、
煙に溶けて周囲に漂っているような気がしました。

「犠牲者の人たちは決して
"自分たちの仇を討って欲しい"などと言っていない」
身勝手な解釈かもしれませんが、私にはそう感じられたのです。

思い切って現場に行って良かった。私はもう迷わない。
医者でも、消防士でも、資産家でもないけれど、
私には私のやるべきことがある。

それが何かははっきり分からなくても、
周囲の誰もが私と違うことを言っても、
多分もう、私は大丈夫。

明日はブッシュ大統領にメールを書いてみよう。
そう考えながら現場を後にすることができました。

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Peace.
Always,

Maki

   
   
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Maki Sano プロフィール:
自然と平和を愛するコピーライター。エスペランティスト。ニューヨーク在住。
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