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From: Maki Sano
Sent: 2004/12/05
To: Everyone  
Subject: 南スウェーデン、エコの旅(その2)

こんにちは!Maki from New Yorkです。

今日は、前回に引き続き「南スウェーデン、エコの旅」の後半をお送りします。
「写真のないフォトレクチャーなんて、絵のないフキダシだけの漫画を読んでる
みたいだ」というごもっともな不満の声(from家人)が聞こえてくる一方で、
意外にも「エコの旅、面白いじゃん」と言ってくださる方も複数人いらして、
わ〜、面白いと思ってくれる人もいるんだ〜、ありがたいことだなあ〜、
と感じ入っている次第です。

さて前回は、エスペラント世界大会の開催地、西海岸のイェーテボリから、
国土を横断して東海岸のストックホルム、さらにフェリーに乗ってバルト海の
ゴットランド島、再び本土に戻って古城の町カルマルと巡ってまいりました。
その後、カルマルの沖合に浮かぶ細長い島エーランド島でエケトルプの遺跡
(世界遺産)を見学したあと、一行(両親と私)は自然エネルギーで走る
SJの電車で、次なる目的地、内陸部のべクショーへと向かったのでした‥‥。


ーーーー以下、「南スウェーデン、エコの旅」(後半)の和訳ですーーーー

なお、文中の( )内は私の注釈です。レクチャーでは語っていません。


■写真:スウェーデン地図

この旅に出る前、まだどの町に行こうか迷っていた頃、父が私に言いました。
「私はベクショーに行ければいい。あとの旅程はお前さんに任せる。」
ベクショーは、父にとってこの旅最大の見どころだったようです。
実際、ベクショーという町は、父のように再生可能エネルギーを専門とする
研究者や技術者たちにとって、非常に重要な町らしいのです
(日本のバイオマスエネルギー関係者の間では「ベクショー詣で」なる
言葉まであるそうです)。

■写真:ベクショー市の環境パンフレットの表紙
青空に白い雲が「CO2」の文字になって浮かんでいる

これはベクショー市のパンフレットです。
ベクショーは豊かな森に包まれた人口約7万人の小都市で、
「脱・化石燃料都市」を長期的目標として掲げています。
化石燃料には、石油や石炭、それに(他の2つほど悪質ではないけれど)
天然ガスなどが含まれ、いずれも温暖化の原因となる二酸化炭素を排出します。
こうした化石燃料との決別を目指すベクショーでは、2010年までの短期目標として
二酸化炭素排出量を1993年度比で50%も減らそうとしています。
ご参考までに、あの京都議定書が定める1990年度比の二酸化炭素削減目標は、
先進国平均でわずか5.2%、EUが8%、日本が6%。そしてアメリカは‥‥
今どうなっているか、みなさんご存知ですよね。
(オーディエンス:「ゼロ%」「いや、マイナスだ」(苦笑))

■写真:緑の木々に囲まれたバイオマスプラントの外観

私たちが訪れたバイオマス(生物由来の資源でエネルギーを作る)プラントです。
名前を「サンドヴィク」といって、ベクショー市が部分所有する
ベクショーエネルギー社、通称「VEAB」が運営しています。

■写真:森の木々。日本と違って木々はきれいに枝打ちされておらず、下枝がぼうぼうの状態

豊かな森林に恵まれたベクショーでは、昔から林業が盛んでした。今も盛んです。
森に入って木を伐ると、伐ったもののうちおよそ1/3は売り物にならない枝や
葉や皮で、廃棄物として捨てられるそうです。でも、これらを細かく砕いて
バイオマスプラントに持って行くと、エネルギー資源として使えるのです。

■写真:粉砕されたウッドチップの山と、その前に立つ「サンドヴィク」の所長

えー、この人は‥‥(オーディエンス:「デイビッド・レターマン!」(笑)
(Maki注:TVの人気トークショーのホスト。確かに少し似ています ^^;)
‥‥ではなくて〜、このプラントの所長を務めるヨンソン氏です。
彼が両手ですくっているのが、森から持ってきたウッドチップです。
彼は、このウッドチップをプラント内で燃やしてお湯を沸かし、
熱湯をパイプに通して町中の家々に暖房として送っているのですね。
同時に、チップを燃やした熱で蒸気を作り、それを電気に変換して
町中に送り出しています。最後に、燃えきったチップの灰は、
天然の肥料として再び元の森林に戻されます。
最初から最後まで、地元でぐるぐる循環しているわけですね。

■写真:「サンドヴィク」プラント内のコントロールルーム。
任務に就くスタッフ数人と、施設の説明をするヨンソン所長、
それを聞く父母(3人ともヘルメット姿。もちろん私もヘルメット姿^^;)

プラントの中も案内してもらいました。ここはコントロールルームです。

■写真:ミーティングルームでヨンソン所長と談話

プラント見学の前に、ヨンソン所長と小1時間ほどお話を楽しみました。
実は、通常このプラントでは個人の見学を受け入れていません。
受け入れているのは、いわゆるテクニカルビジット、つまり企業や行政や教育
機関などの視察団だけで、しかも、予約に1500クローナ、見学に1500クローナ、
セミナーに1000クローナ‥‥と、かなり高額の手数料を請求してきます
(税込み計7万円近く。それでも見学希望者が後を絶たないというのだから
「エコは儲かる」の好例でしょうね)。
私は、父を念願のベクショーに連れて行ってあげたいけれど、
そんな大金を払って「お客さん」として行くのには抵抗がありました
(それ以前に、個人旅行者ということで門前払いを食う可能性が大でしたし)。
どうせ行くなら、先方にも喜んでもらいたい。そこで、旅行の2か月ほど前に
メールでサンドヴィクプラントにこう打診してみたのです。
「おたくの英文パンフレットを日本語に翻訳して差し上げます!」 
というのも、サンドヴィクには日本から毎年多くの視察団が訪れているため、
きっと日本語のインフォメーションを欲しがっているだろうと思ったのです。
父からも、「日本のバイオマスエネルギーの最新事情について、
現地で短い講演をやってもいい」と言ってきたので、いざ、
講演と翻訳の2本立てで受け入れを迫ってみました。

■写真:父の講演風景。スクリーン上の折れ線グラフを前に話し込むヨンソン所長と父

その結果、ご覧のように、我々のアイデアは幸運にも実を結んだわけです。
この写真は、ヨンソン所長と父が、私にはまったく理解できない何かを熱心に
語り合っているところです(確か、木の含水率が何%以下なら採算性が望めるか?
を計算式で割り出す、みたいなことだったと思います。そうそう、私の汗と涙の
結晶であるパンフレット翻訳は、父の技術校正を経て、見学当日に無事提出する
ことができました。所長さんにもとても喜んでいただけたのですが、実はその時
サンドヴィクプラントではすでに新しいパンフレットが作成されていて、結局、
旧パンフレットを訳した私の文が陽の目を見ることはありませんでした。トホホ。
でも、慣れない科学翻訳を辞書を引き引きやったおかげで、当日はかなり楽に
会話についていくことができました。翻訳作業は決して無駄ではなかった!
というよりも、翻訳をやっていなかったら、私は ー仮に高い手数料を支払って
いたとしてもー バイオマスのイロハも知らずに押し掛けてきた、かなり失礼な
見学者として、日本人の評判を落としていたかもしれません。_ _;)

所長さんとのお話の中で、とても心動かされた事実があります。
それは、スウェーデンではバイオマスより石油の方が高くつく、ということです。
バイオマスエネルギーは石油のほぼ半分の値段で手に入れることができるのです。
(原料入手の段階では石油の方が安いのですが)地球温暖化エネルギーに対し
政府がさまざまな税金を課すことによって、相対的にグリーンエネルギーが
安くなって、人々が容易にグリーンエネルギーを買えるようになったのです。
こういう動きが、日本、そしてアメリカでもぜひ起こってほしいと思いました。

■写真:スウェーデン地図

そしていよいよ最後の訪問地、デンマークのコペンハーゲンです。

■写真:電柱に貼られたエスペラントの大きなポスター

コペンハーゲンの中心街で、なぜかエスペラントのポスターを何度か見かけました。
誰が何のために貼ったものなのか、結局謎のままでしたが、私たち、デンマークの
首都から温かく迎えられてるのね〜!と、いい気分にはさせていただきました(笑)。

■写真:ニューハウン地区のピアに付けられた小さな船

私たちがコペンハーゲンを訪れたのは、世界最大の洋上ウィンドファームを
見るためです。コペンハーゲン沖約2km、スウェーデンとデンマークの国境近くの
海上にずらりと並ぶ風車群。ここの見学ツアーもやはり視察団対象で、
バイオマスプラントと同様高額の手数料がかかります。でも、いろいろ調べた結果、
ツアーに参加しなくても、かつて砦だったというコペンハーゲン沖の島に行く
小さな観光船に乗れば、往復の途中に風車を正面から見られるということが
分かりました。NYで言えば、自由の女神ツアーに参加しなくても、スタッテン島
行きフェリーに乗ればいつでも女神さんが拝める、というのと同じノリですね。

■写真:海上に一直線に並ぶ真っ白いハイテク風車

洋上ウィンドファームの名は「ミッデルグルンデン」。
海面から突き出した部分だけでも64mもの高さがある巨大な風車が、
水深3〜6mの沖合いに全部で20基、ずらりと並んでいます。
端から端までの距離は2km。実に壮大なウィンドファームです。
コペンハーゲン上空を飛行機で通過した際にも、上空からはっきり確認する
ことができました。2000年に誕生したばかりの、コペンハーゲンの新名所です。

通常、風車を洋上に建てるのは、地上に建てるよりコストがかさみます。
けれど、集風効果(そんな言葉があるのかどうか知りませんが)は地上より
はるかに優れています。そこで今、世界中で洋上風車の建設計画が進んでいます。
アメリカにも計画があるんですよ。マサチューセッツ州のケープコッド沖に
(このミッデルグルンデンを上回る)世界最大規模の洋上ウィンドファームを
作ろうという動きがあります。(オーディエンス:「ああ、聞いたことがある。
景観を損ねるとかでもめているらしいね。」「はい。岸からはほとんど見えない、
十分な沖合いに作ると聞いてはいますが、私も詳しいことはまだよく知りません。」)

■ 写真:洋上ウィンドファームの美しい空撮写真
(インターネットからダウンロードしたもの)

ミッデルグルンデンの別ショットです。風車の後ろの方、
海上に橋がかかってるのが見えますか?これは、スウェーデンとデンマークの
国境をまたぐ新しい橋です。ミッデルグルンデンとほぼ同時期に完成しました。
こちら(右手)に見えるのがデンマーク、こちら(左手)がスウェーデン。
で、スウェーデン側のすぐこのあたりに、原子力発電所が建っているんです。
バーセベック原発といいます。スウェーデン政府は、1999年、この
バーセベック原発の一号基を閉鎖するという歴史的決断を実行しました。
アメリカのスリーマイル島原発事故の後に行われた国民投票で、
多くの国民が原発の廃止を希望したためです。これを受けてスウェーデンは、
「将来国内のすべての原発を閉鎖する」という、非常に困難な、
そしてそれゆえに非常に勇気ある目標を掲げることになったのです。

現在スウェーデンには12基の原発があり、国のエネルギー需要の40%以上を
原子力に頼っています。この数字からも、原発廃止に向けた現状の厳しさが分かる
と思います。一方、お隣のデンマークは、先述したように反・原発を貫いており、
(にもかかわらず隣国スウェーデンが)デンマークの首都コペンハーゲンの目と鼻
の先にこのバーセベック原発を構えていることを、長年疎ましく思ってきました。
こうしたデンマークからの圧力と、自国の国民投票の結果を受けて、
スウェーデンはついに原発廃止の第一弾を実施するに至ったのです。
行く手にはたくさんの技術的、経済的障害が立ちはだかっていますが、
第二弾も実施の方向で模索が続けられています。ある環境ジャーナリスト
(先述の飯田哲也氏のことです)が、このようなことを書いています。
閉鎖された原子力発電所。その前に立ち並ぶ真新しい洋上風車群。
その光景は、私たちの世界の未来を象徴しているようだと。
私は、彼の言葉が正しかったと言えるようになることを
強く願ってやみません。ありがとうございました。

(オーディエンスがレクチャー後も楽しめる(?)よう、世界の主要国の
エネルギー利用状況を表したグラフをお土産として配布しました。)

関連ウェブサイト:

ゴットランド島のウィンドファームを運営する
バッテンフォール社のサイト(スウェーデン語)
http://www.vattenfall.se/om_vattenfall/var_verksamhet/forskning_och_utveckling/vindkraft/

バイオマスプラント「サンドヴィク」を運営する
ベクショーエネルギー社のサイト(英語オプションあり)
http://www.veab.se/

洋上ウィンドファーム「ミッデルグルンデン」のサイト(英語)
http://www.middelgrunden.dk/MG_UK/ukindex.htm

Peace.
Always,
Maki

   
   
 
   
   
   
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Maki Sano プロフィール:
自然と平和を愛するコピーライター。エスペランティスト。ニューヨーク在住。
「メッセージ from NY」のコーナーでは、Makiさんが配信しているメールニュース『NY Estuary』を転載しています。メールニュースを直接受信したい方は、こちら↓まで。
http://www.emaga.com/info/
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