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フカフカまんじゅうキック
『柴犬は、吠えてよかったと思った』
2008/03/20 UP

 ランチはヴェセルカでとった。仁子は、じゃがいもとリークのスープも、鱈のフライもよーく食べ、終わるとハイチェアーから私の膝に移り、と、フレンチフライを見つけて1本つかんだ。するとお父さんが向かいで見ていて「あ、眠気が来た」と言った。目を閉じたままくちを 動かしているらしい。さらに何本か取って食べてる間にゆらーっゆらーっとなっていた。もう一本、体勢そのままで、フライを持った右手を上に上げて私に差し出しながら、左下にすーっと揺れて、止まり、ずっと見ていたお父さんが「アイラブユーッ!」と、彼なりになるべく小さな声で言った。もう1本?んで口に入れると、私の方へ後ろによっかかり、目をつむったままで口をもぐり、もぐり、すー、とねむりの世界に吸い込まれてくのが見れた。フレンチフライがはいったままだ。虫歯にしたくないので口をこじ開けたい気持ちは山々だったが、まさかそこまではできなかった。

 サンライズマートで夕食の買い物を済ませると、6階にあるアパートへ、お父さんにそれを運んでもらい、私は寝た仁子を連れて、るいじの学校の門内のベンチに座った。まだお迎えには50分もあり、幸い陽が当たって寒くはないので、何年ぶりかで読書をした。こんなチャンスもあろうかと、ダイパーバッグに隠し持っていたのは夏目漱石。いつ読むのを止めても悔いの無いように、短編集だ。この人のはいつも笑えるのだが、なんだか漫画でも読んでるような気持ちになってるのが不思議。
 
 寒くてご無沙汰していたトンプキンス×スクエア×パークには、私たちのようにご無沙汰していた人々がたっくさん来ていた。おやつのおまんじゅうも食べ、兄も妹もひとしきり遊んだので帰ろうかと言っていたころ、随分大きな子供ら、私なんかよりはるかに体の大きいのが5?6人入って来て、小さい子のいるモンキーバーを平気で駆け回り、フットボールを投げている。私は目を剥いた。幼児を連れている親にとって、3歳児が狭いモンキーバーを駆け回っているのでさえ、見ていて怖いと思う。実際、仁子はそのくらいの子供にぶつかってふっとばされた。その子は黙って立ち上がると、そのまま友達と追いかけっこに消えた。しかしそんなのは比じゃない。このでかい、きっとひげも剃ってる子らの背後にたとえどんなかわいそうな事情があったとしても、許してやる余地はない。「そんなスピードであんたらが動き回ったら危ないでしょ!」と言ったがこんな私から言われたくらいじゃ痛くもない。でかいのは走り回り、あんなにいる親たちは何も言わない。だんだんむかむかしてきて、「あんたたち、やりすぎだって言ってんの。隣(ちゃんと広いところがあるのだ。)へ行きなさい!それくらいわかんないの!」と、柴犬みたいに吠えた。誰も何も言わなかった。もちろん丸無視されたが、言わずにはいられなかった。「帰ろう」と公園を出ようとすると、ポリスの車が通り、るいじの友達のお父さんが「ポリスに言いましょうか」と言ってくれたが、「いえ、いいです」と答えた。「公園にいる人たちに任せましょう」とも言ったが、内心、何も言わない親たちのために何もしてあげたくなかったし、落ち着き払ったポリスに「さあさあ、あっちで遊びなさい」なんて、ただ押し出されるだけというのを想像しただけでも腹立たしかった。こういう子供たちには、マフィアのような怖?いお兄さんの、突き刺すような一言か一瞥がいいと思うが、そんな人は居合わせなかった。

 吠えられただけ、よかった。4年前は、こんな場合にどう考えてよいか、言ってよいかわからず、ただむかむかして何も言えず、悔しくて後で泣いていた。修羅場などくぐったこともない、傷つくのが嫌で、物事の皮ばっかりつついて心配するような人間だったんだと、思う。そんな自分が嫌で20代のはじめにひとりでバックパック旅行をしてヨーロッパのユースホステルなどを渡り歩いたが、わかったのは、「場所を移動しただけでは自分のなにも変わらない」ということだけだった。びっくりするほど痛い思いをして子供を産んで、少しは目が違うものも見るようになって、よかった。



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