サンクスギビングの後から、お父さんにひと月と1週間、息子に2週間取り憑いていた風邪が、とうとう私の上に降り立ったのがつい先日。さりげなく喉をぴりぴりさせたと思った翌日、滝のような鼻水で、高校受験の冬を思い出しました。あの時からです、どうにかタンポンを改良して鼻に突っ込めるものを誰か作ってはいないのかと、毎度こんなときに考える。師走の忙しいのに鼻水にかまっている時間がもったいなくて、思い切りかんでみたら、左耳の内側のどこかで、ぽかっと言った。清水アキラがものまねで「浪花節だよ人生は」をするときに出す、出だしのすぐ後、ぽっぽぽっ、あのぽって、あれ。そしたらまる二日、そっちの耳だけ水に潜ってるみたいになって、ほとんど聞こえない。どうもややこしかった。左上奥歯にかかる音だけがものすごく頭蓋骨に響くので、歯ごたえのあるものを食めば、ぐあっしゃぐあっしゃとうるさくってしょうがない。それに時々痛くなるのは困った。もともと耳が悪い訳ではないのに家族の言葉がわからなくて聞き返すわたし、日本の家族の言葉を聞き違え、何度も聞き返すわたしである。いつもそれで自分も周囲もいらつかせたと思うが、ここまで聞こえないと、不思議と「半分聞こえないくらいがラクでいい」くらいに思えて来ました。そして翌朝は生理。何年たっても不順であることだけは一貫している我が周期。ひと月の間「そろそろよー」っておしらせをちびちびとよこしといて来なくって、風邪のまっただ中にどっかーんと下ろすなんて、間の悪いいや、誰かが遊んでるのかもしれない。
そしてそれは、朝一番で子供らを定期検診にドクターのところへ連れて行く日でした。5歳のるいじは視力検査へ行き、終わるとスパイダーマンのぬいぐるみをもらってきました。鼻の部分が凹んで空豆みたいな顔のスパイダーマンで、どうもクリスマスが近いということらしい。視力検査がゲームみたいで楽しかった兄は、ドクターを待つ間にそのぬいぐるみを景気よく投げ上げて遊び、私たちから叱られていました。前に紹介したことのあるこのドクター、「小さいドラキュラ」イメージだった彼女は、ここんとこイメージが変わり、ベリーショートを伸ばし、タイトなロングスカートがフレアのパンツになり、どう見ても「小さいトラボルタ」になっていました。
彼女が現れ、私が話を始めると、開いていた診察室のドアの向こうから、横に大きな女の人が、お父さんにゼスチャーしている。私が大きいと言ったら、とても大きな人なのだ。彼女が動くと、彼女と同じくらいの大きなショッピングカートが出て来た。この人がクリスマスのプレゼントを配っているらしい。それも2種類で、スパイダーマンか、バービー人形らしい。1歳半のにこを見て、まず取り出したダークスキンのバービーをひっこめ、スパニッシュ系のバービーをくれた。黒く長い髪、ミニスカのロングブーツ。知ってる人に似ている。ドクターが去って、注射の看護婦さんを待つ間、子供をあやして間を持たせる気持ち半分、遊びたい気持ち半分のお父さんが、バービーを手に取った。あとはもう立て板に水で、まずはバービーのトーク、変なダンス、映画に出て来たスパイダーマンと女の子のキスシーンは息子に好評。さらにさかさにして、「あっ、おしりが鳥肌だ!」。と思ったら下着らしかった。その発見も息子に喜ばれた。さらにお父さん大得意の創作歌。こうして注射前の診察室を盛り上げていたら、通りがかった全く関係のない女性のドクターが顔をのぞかせ、「お父さんがバービーで遊んでるわ!」と言うと入って来て、一緒にバービートークなどをして盛り上がっていってくれた。私もこういう人の輪にひょいと入っていけるしなやかさがあったらと、思う。
こうして、とくに風邪をひいてなかったにこは、予防接種を受けた副作用で熱を二日にわたって出し、「おっぱい、おっぱい」の大連発。スターマインまであと一歩。耳の調子が軽くなると共に、立ちくらみのような感じが始終するようになって平衡感覚を失ったわたしは、念仏を唱える気分です。般若心経の前三分の一
ならなんとか。
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