暑い、最上階は暑いのだ、と毎年思っていて今年も忘れていた。湿気のある日はどこもかしこも暑いのに、今日みたいにトイレのドアもうまく閉まるような乾燥した日には、1階がたいへんひんやりしている。そして寝た子をかついで上るにつれ、4、5と、なんだか嫌な感じがしてきて、6階、「いたたたた」汗が目に入って痛い。軽装の夏だから子供をかついで上がったけど、冬はできない。するものか。それでも想像がつく。上目づかいでカニの子みたいに両手をあげて「お母さん、だっこ」と言う様が。まっすぐな道ならともかく、幅の狭い、さらに言うならこきたないその階段に、ぎゃあぎゃあ泣くのをおいてけぼりはできないし、30分もかけて上がるんだろうか。そうなんだろうな。
5階までの建物が多い中、6階は見晴らしがよく、風通しもよい。同時に、にょきにょきと乱立している屋根の上の煙突のあちらこちらからもくもく出てくる排気ガスとススが入ってくるのが困るのと、修理したい箇所があっても管理人がなかなか来てくれないことが困る。来るときはいつも「ぜーっぜーっ」と音がするので来たとすぐわかる。ここに冷房を置いていないというと皆驚き、さらに扇風機もないと言うと一気に引かれてしまう。赤ちゃんのいたころは、脱水症状でも起こしはしないかと心配にもなったが大丈夫で、そうか、大丈夫ならこれでいってしまえ、と、まだやっている。
階段の上り下りにはたいてい数を数えたり、アルファベットや五十音を唱えるようにしているが、五十音をやっているとすぐに横やりを入れてくるので、は行はまだ廊下に響いたことはないと思う。とくに上りは自分で上ってほしいので、やる気を起こさせようと、「1はトーマス!」「次は誰かな?」「エドワード!」「よーし確かめよう!わーい」とやるので、いつも数字ネタになります。もともと数字が好きだったのかどうなのか、赤ちゃんのころに彼の目を釘付けにしたテレビの画面は、NY1のロット当選番号を表示している時で、ここで流れる軽快な音楽に首を振ってリズムをとりながら、次々と現れる不特定の数字群をじーっと見ていたのを思い出します。いろんなものが数字に見えるのか、棒が2本あると「11」と言い、英文のwill,all,などを見ても「11がある」と言い、階段の手すりの装飾は「3」や「8」が見えるんだそうです。でもまだカモやアヒルの横向きを「2」とは呼びません。
加えて言うなら、彼のもう一つのお気に入りテレビは、NY1を見てるとでてくる「CARMEL」のコマーシャル、「ッタークスィーイ!!!」と大口を開けて必至にタクシーを探す人の横で、スマートげにリムジンに乗り込む家族が出るあれで、その後に言う「666ー6666(スィックススィックススィックス、スィクスティースィックス、スィクスティースィックス)」の唱和、これは欠かせません。 |